ドージマムテキ

  〜THE AFFECTIONATE SPACE〜


10歳まで(旧年齢11歳)まで現役を続け、中央50戦、地方2戦、海外5戦の計57戦を駆け抜けたドージマムテキ。
無事是名馬の名に相応しい現役時代を送り、特に海外遠征では帯同馬としての能力を発揮した。
馬はとてもデリケートな精神の持ち主で、海外遠征などの長距離移動をする場合、輸送や検疫を一頭で過ごす事はかなりなストレス蓄積の要因となる。
その結果、レースでその能力を十分に発揮出来なかったりする事が多いという。
そこで、その様な事を少しでも回避する為に、遠征先でリラックスして過ごせる様にと考え出されたのが一緒に遠征行程を共にする帯同馬という存在だった。
帯同馬はどの馬にでも出来る訳ではなく、常に冷静さを要求されたりするのだそうだ。
考えてみれば、落ち着きがなかったり、ストレスでイライラしてる馬と一緒になってしまっては意味がない訳で・・・。
そして、帯同馬自身もレースに出るケースがあり、ドージマムテキはそのケースに該当した。
彼は帯同馬としてシーキングザパール、アグネスワールドらを完璧にサポートし、自身もレースに臨むという立派な仕事を成し遂げたのだから素晴らしい!の一言に尽きる。
ムテキがいたからこそ、彼らが海外GI制覇出来たと言っても過言ではない!くらいに思ったりした。
競走馬として生きてる限り、成績を残してこそという部分は否定出来ないけど、ムテキの様な誰もが持っている訳ではない能力を見出され、こなす事も素敵な生き方だと思う。
その、ドージマムテキは現在は生まれ故郷の堂島牧場で功労馬として悠々自適の生活を送っている。
2002年の初夏、ムテキに会いに堂島牧場さんへ伺わせて頂く事に!
「奥に放牧されているから」と場長さんに言われ、行ってみると場長夫人が丁度ムテキに青草をあげている所だった。
「ここに帰ってきた当初は、結構やんちゃだったのよ。だから、こうやって少しでも私の匂い覚えてもらえる様に毎日青草やおやつを手からあげてるの。」と優しい眼差しをムテキに向けながら夫人は話してくれた。
「はい、おしまい!」の声に、「まだ欲しい!」と前掻きをしながら夫人の横を付いて歩くムテキ、その仕草に負けていつも青草をあげてしまうのだそうで・・・。
そんな優しい光景を眺めていると、牧場で飼われている犬とネコが、「私もかまって!」と足元にちょこんとお座り!
ずっとムテキばかりを見つめていた私は周りを見渡して、初めて他にも犬が何匹もいる事に気付いた。
皆、平気でムテキの放牧場に入ったり、近くに寄っていったりしている!
それでも、ムテキは威嚇する事もなく、それが当たり前と言わんばかりにその小さな存在を許していた。
「たまにね、隣のヤギが抜け出してムテキと一緒に昼寝してたりするのよ。ムテキは皆にとても優しいのよね。」と聞いて、来る途中にヤギもいたんだった!と思い出した。
「ここに来た時、普通ならあれだけ長く走った馬だから鞍傷(鞍で背中が擦れて出来る擦り傷)の一つくらいあって当然なのに、ムテキはそれが全くなかったの。本当に大事にされてた証拠。だから私達もそれに負けないくらいムテキを愛してあげたいのよ。」の言葉に何ともいえない暖かい気持ちになって、涙が出そうになった。
この世に生を受けた時からずっと見守られ・・・愛されてきた。
約束された帰郷ではなくともその日を待ち望まれ、それが叶った今最高の愛と小さな可愛い仲間達・・・ムテキは本当に幸せ者だな・・・本当の幸せを手に入れた馬なんだなと心から思った。
それぞれにとって、何が幸せで何が一番なのかを考えさせられた出会いだった。



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